2019年度後期 発表11 本を書く方のための 出版業界案内
発表者:吉田秀登
テーマ:本を書く方のための 出版業界案内
業界の特徴:
1、市場の狭隘性・業界の規模について。
現在、日本の出版社は約3000社。市場規模約1兆5千億円(20年で半減)。業界グループとして小学館・集英社(一ツ橋グループ)、講談社・光文社(音羽グループ)KADOKAWA(角川・ドワンゴ等)、大日本印刷が中心となったCHIグループ(丸善ジュンク堂・図書館流通センター等)。最大手は講談社、出版社の約9割が首都圏に集中。
2、監督官庁はあるのか?
いちおう監督省庁はないということになっているが、自治体条令での販売・流通規制はある。
3、外国資本・他業界・旧財閥系企業の関与が少ない。
外資系出版ではナショナルジオグラフィック、デアゴスティーニ(伊)やアシェット(
仏)、シュプリンガーフェアラーク等少数。宗教団体が出版社を持っている場合もある。
4、雑誌と書籍、新書と文庫はそれぞれ別ジャンル。
コード、流通条件等がそれぞれ違う。新書・文庫ともに日本発祥は岩波書店と目されて
いる。
●文庫は本来は名著の普及版、つまり文庫化は「殿堂入り」扱いであった。
●みすず書房の単行本等、なかなか文庫にならない出版社もある。
●ヒットした単行本が文庫化される際、契約関係で出版社が変更する場合もある。
●新書・文庫は点数を多く出さないと維持できないので、小さな出版社では出せないケースが多い。
5、書籍は20年連続でマーケットが縮小。
●「付録ビジネス」やマンガ著作権販売は堅調。
6、定価販売は再販価格維持法で、独禁法例外規定とされている。現在、公正取引委員会指導のもと「弾力的運用」が進んでいる。再販制のない国・一時やめて復活させた国もある。
7、電子書籍の売上は年々伸びて、出版市場全体の約20%程度にまで成長。ただしその内訳はマンガが8割。日本の場合、良質な新書が電子書籍の代わりをしているという意見もある。
出版は文化か?
●一般人への本格的な普及が始まったのは19世紀以降。
●奥付は昔は義務だったが、いまは法的規制はなく販売・流通上で必要なものとして必ず付いている。。
●紙の本の運命はまだ未知数。
1、いつまで定価があるのか?
日本では将来的になくなる可能性が高いのでは?
2、いつまで出版社があるのか?
業界全体の早急なニューリアルが求められている。
3、本屋の現状
2000年には2万1千店舗以上あった本屋が現在では1万2千店舗に激減。20年で4割の本屋が消えたという見解もある。紀伊國屋書店、丸善ジュンク堂、未来屋書店(イオングループ)、有隣堂、くまざわ書店が大きい順。中でも紀伊國屋グループが大きい。書店イベントでは講演会、サイン会がメインで欧米のような朗読会は少ない。
4、アマゾンは便利だが懸念材料もある。
5、アマゾン・レビューは気になるが、レフェリーでも査読でもないので、過度に気にし
ないのが良い。
著者から見た出版
1、書籍はまだオーソリティがあると目される。紙の本が存在するうちに書いておくべき。
「学問的に準備不足」「公表に不安点が残っている」「先輩から〈一般書書くなんて生意気だ〉と目を付けられないか」という不安を抑え、早期に執筆機会を持つことが重要。
2、出版社は規模・専門性・編集者の方針を総合して検討。
3、出版社との業務上の留意点。コミュニケーションを多く持つべき。
4、本をの印税は期待できない。
5、ヒットの法則はまだない。
6、読者層をイメージして書きましょう。著作権・肖像権・名誉棄損・差別不快語等については編集者に相談。
7、企画・原稿の売り込み方
提案相手を絞り込み、こまめに連絡。決定後は締め切りを守る。
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