2020年度前期 第1回現代研究会報告

日時:2020年5月16日(土) 13:00~16:00

場所:オンライン(Zoom会議室)

参加者:10名)


発表1

発表者:平林二郎

テーマ:仏教経典と経典読誦~経典読誦からみる仏教史の再構築へむけて~

内容:副題にもあるように、経典読誦の方法と意味の歴史的変化を通して仏教史を再検討し再構築しようと試みる発表である。釈迦牟尼(ブッダ)入滅後、弟子たちの結集によって師の直説をまとめたのが初期仏教経典であるが、その経典読誦は出家者の信仰の表白であり、悟りを目指す自らの修行のためであった。紀元前二世紀頃、行き詰まった初期仏教に新しいタイプの仏教者が現れ大乗仏教を創始する。彼らは衆生救済こそが釈迦の教えであり、その実践によってブッダになれると説いたが、その教理をまとめたのが大乗仏典である。大乗仏典の読誦はむろん修業のために行うが、同時に他者への教え、また読誦の功徳を重視する。既存の仏教学では、初期仏教から大乗仏教への移行は出家者中心の初期仏教から在家者のための大乗仏教への変化として理解されてきたが、この図式は必ずしも正しい歴史事実を反映してはいない。初期仏教経典の中にすでに在家者の本格的な関りを表しているとみられる部分が存在する。より正確な理解のため、仏教経典を初期仏教の段階から再読し、経典読誦の変化を解明して、仏教史を再検討する必要がある。

詳しくはホームページ掲載予定の発表者によるエッセーを参照されたい。


発表2

発表者:佐藤壮広

テーマ:死者と生者をつなぐ事業ー沖縄戦死者遺骨収集の現代的意義ー

内容:沖縄遺骨収集ボランティア団体「ガマフヤー」の活動と意義についての発表である。ガマフヤーとは「洞窟(ガマ)を掘る人(フヤー)」という意味である。この団体は沖縄県出身の具志堅隆松氏が中心となって発足した組織であるが、40年近くも沖縄戦で亡くなった人々の遺骨収集を続けている。2009年秋には厚生労働省、沖縄県、那覇市に働きかけ、遺骨収集をホームレスや生活保護受給者の就労支援としての公共事業にすることに成功した。発表者は2011年12月末に沖縄県与那原町の国道バイパス工事に伴う実際の遺骨収集作業に参加した。その時の体験及び具志堅氏へのインタビューを基にガマフヤーの現代的意義を語った。二つの意義がある。一つは、ガマフヤーの活動によってこれまで厚生労働省委託の土木建築業者に任されていた遺骨収集が適正に行われるようになったことである。もう一つは、その活動が沖縄土着の民俗文化における生者と死者との関りを再認識させてくれることである。沖縄文化においては、人骨は単なる魂が抜けた無機質な物体ではない。そこには骨の神(フニシン)が宿る。したがって遺骨収集に関わる人々は絶えず死者との対話をすることになる。

詳しくはホームページ掲載予定の発表者によるエッセーを参照されたい。


感想:Zoomを使った初めての研究会なので戦々恐々としたスタートであったが、とりたてて大きな障害もなく、参加者全員がスムーズに会議室に入ることができた。オンライン授業の準備、またインターネット環境の問題などで正規メンバーの欠席が多かったが、ゲスト参加者もいて、活気のある研究会となった。発表内容も興味深く、また活発な意見交換がなされた。技術的には映像・音声共にほとんど問題なく共有することができた。ただ、オンラインの研究会であるためか、終わった後、いつも以上の疲労感があった。回を重ねればやがて慣れるのだろうか。参加していただいた方々に感謝を申し上げます。


現代研究会

「文化と社会に関する様々なテーマ、諸問題を取り上げ、過去から未来への歴史的視野で考察し、議論を行う」ことがこの研究会の目的です。