2019年度前期 発表6 マンガ・アニメから考える地域社会の在り方―自虐ネタマンガ・アニメから見る地域性
小村明子
日本の各地方自治体では、マンガやアニメを地域振興のコンテンツとして試みようとするところが多くなっている。アニメ聖地巡礼はもとより、地域の特性などをネタにして地域性をアピールしているものもここ数年で見られるようになっている。
かつてマンガやアニメは幼少期を中心とした子ども向けのコンテンツであった。それが大人向けとして機能するようになったのは、ここ近年のことである。それにはインターネットの影響が強いと言えるだろう。特に、アニメは翻訳をつければインターネットで全世界に対して配信できる上に、地域をアピールすることができる。故に、アニメは地域の観光地や特産物を広く世の中にアピールすることができるコンテンツとして見ることができる。
気をつけねばならないのは、こうした地域の特性をネタにしたものの中には、自虐ネタを扱っている作品がある。例えば、実写化にもなった「翔んで埼玉」である。これは1980年代のバブル絶頂期に描かれたマンガを元にした映画で、その自虐性から話題となった作品である。またインターネット配信のマンガを元にしてアニメおよび実写化された「お前はまだグンマを知らない」と言う作品も自虐ネタが含まれている。こうした作品がなぜ作られるのか。それは勿論、地域の人びとがこうした自虐ネタを受け入れるという寛大さがあってのことなのであるが、地域愛を自虐ネタで表現するという愛情表現の一つが逆に地域の特性をわかりやすく表現しているという点で高評価を得たと推測する。
2014年から現在まで、地方創生が安倍政権の内政上の最重要課題の一つとなっている。とりわけ、地方自治体は地域の少子高齢化への対策が急務となっている。中でも、いかに地域をアピールして、大都会の若い世代を地方へ呼び込み若い世代の住民数を上げるかが課題となっている。しかしながら、自虐ネタに見られるような地域性は時として、都会からの移住者にとって弊害となる。地域の独自性が強すぎて、移住者に受け入れ難い地域ルールも存在するからだ。地域性について、地域住民は改めて見直してから移住者を受け入れる必要があるだろう。
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