後期テーマ:「地域創生」発表2 地域創生と異文化理解 ―山梨県の外国人観光客受け入れ対策についての考察
参考論文:「地域創生と異文化理解 : 山梨県の外国人観光客受け入れ対策についての考察」
小村 明子
立教大学社会学部兼任講師
参考記事:参考:アニメと地域創生アニメ「ゾンビランドサガ」を考える
1.研究目的:
´ 少子高齢化あるいは過疎化対策による地域社会において、観光資源を地域経済活性
化の起爆剤として取り入れているところがある。(一例として→山梨県)
´ 訪日観光客に対する「おもてなし」対策
→地域経済活性化のためには、外国人観光客の消費行動や嗜好について知ることが
必要。
→いかに異文化理解して対応しているのかその実態について分析・考察する。
´ 具体的には、富士山という日本有数の観光地を抱える山梨県で行なったフィールド
調査について分析・考察する。
2.山梨県における地域創生・まちづくりについて
Ø 少子高齢化に伴う地域振興・まちづくり
Ø →多くの著書で対策や事例研究などが述べられている。
Ø 2015年「山梨県まち・ひと・しごと創生総合戦略(平成 30 年3月改訂版)」
による県の地域創生における政策方針
Ø 「やまなしブランド」構築
桃・ブドウなどの果樹を主産業とする農業生産加工品、ワインなどの加工品な
どブランドとして世界各国に売り込む。
Ø 「やまなしリンケージプロジェクト」の推進
別荘など 2 地域居住者、県出身者の帰郷、県外からの旅行宿泊者を県に呼び込
んで地域活性化に繋げていこうとするもの。
3.インバウンドへの取り組み →2016 年 日本政府観光局(JNTO)の報告書による。
´ 2016年4月から8月までの5市町によるインバウンドに関する取り組み状
況、インバウンドに取り組んでいる民間事業者への調査、海外消費者へのアンケー
ト調査およびフォーカスグループへのインタビュー、海外の旅行会社へのインタビ
ュー結果を報告したもの。
´ 対象地域:兵庫県豊岡市、北海道函館市、徳島県三好市、山梨県富士吉田市および
富士河口湖町。
´ 「訪日外国人を受け入れるマインドが不足していること」
「訪日外国人に抵抗感を持っていること」が課題(日本政府観光局 2016:5)。
´ 問題はこれだけではない。
´ 訪日観光客は自分の文化や生活習慣をそのまま日本に持ち込んでくる 。
´ 彼らの行動や嗜好を学ばなければ、彼らを受け入れていることにならない。
「一見さん」だからそれで良い?→今は SNS 投稿で情報が一気に拡散する時代。
´ 地域経済活性化のために、訪日観光客の消費行動や嗜好について知るべき。
´ 自治体任せにせず、地域住民や地域の有識者と連携して取り組むべき。
(地域のことは地域住民がよく知っている。地域に居住する外国人から文化情報を
得るなど彼らとともに連帯することで、訪日観光客対策に繋がる。)
´ 送り出し側も、異文化にいることを理解し、羽目を外すことがないよう、注意喚起
する必要がある。
⇒ つまり、相互理解が必要。
4.文献調査およびフィールド調査について
Ø 山梨県による統計調査報告書(「山梨県観光入込客統計調査」)
→年4回四季ごとに県内10箇所における実態調査。
Ø 山梨県庁、富士吉田市、富士河口湖町への聞き取り調査。
Ø フィールド調査
Ø 甲府地区(湯村温泉、昇仙峡)、富士山5合目、河口湖、忍野八海、清里、石和温
泉
5.山梨県における訪日観光客の現状と受け入れ対策
´ 山梨県内における宿泊者数(H29 年):8,196,522 人(延べ人数)
´ うち 1,472,734 人が外国人(約 20%)
´ 県内を 5 圏域に分ける。
´ 富士・東部:東京から直通運転バスなど利便性が良い。
´ 特急の停車駅(山梨県内):大月、塩山、山梨市、石和温泉、甲府、韮崎、小淵沢
´ 富士・東部:自然豊かで風光明媚な地域が多い。富士山、富士五湖を抱える
´ 峡南:身延山や下部温泉
´ 峡中:甲府市や中巨摩郡昭和町などビジネスや工業団地が主流の地域。中巨摩郡昭
和町は、この 20 年で若い世代の人口が増え続けている地域。工業団地があり、中
央高㏿道路の甲府昭和インターチェンジが近く、交通の大動脈にある。メガショッ
ピングモールもある。2027 年に隣接する中央市にリニア駅がオープンする。
´ 峡東:石和温泉がある。また、勝沼ぶどう郷など桃とブドウ農家、ワイン醸㐀所が
多い。空き家対策のために移住対策も行っている。
´ 峡北:八ヶ岳山麓、清里、小淵沢といった避暑地のある地域。近年では高齢者層の
セカンドライフや農業移住を中心とした若者向けの移住対策を行っている地域でも
ある。
6.交通の利便性と地域性
´ 車か、電車か
´ 特急が停車するか否か
´ 都心からどれくらい離れているか
´ 滞在者を迎え入れてくれる土地柄であるか否か
7.山梨県内の観光地について
´ 地域により、盛衰の差がある。
→地域の持っている構㐀的な問題(観光資源、人口減少、交通アクセスの不便さなど)
富士山・富士五湖周辺とそれ以外の県内地域との格差
参考:アニメコンテンツの利用
- 「ゆるキャン△」→公式ホームページ http://yurucamp.jp)´
- 「富士の国やまなし」ホームページ
(https://www.yamanashi-kankou.jp/special/sp_yurucamp/index.html
´ 富士・東部および峡南地域を紹介している。
´ アニメ・コンテンツ=アニメ聖地巡礼となるのか?
→アニメファン、アニメを詳しく視聴した人が聖地巡礼に訪れる。
→アニメ・コンテンツを観光資源にするのは、限界がある。
(例外:富士急ハイランド→期間限定で「ラブライブ」とのコラボレーションイベント
を行なっている。)
8.考察
「外国人観光客=マナーが悪い」?
´ 富士吉田市産業観光部富士山課、富士河口湖町観光課、共に
「日本人も外国人もない」
´ 各言語による掲示対策
例:使用したトイレットペーパーをゴミ箱に捨てず、流すこと。座り方。
´ 富士山のゴミ対策→だいぶ改善されている(行政や地元の市民団体の努力による)
´ 和歌山県高野山の例→富士登山は?身延山久遠寺は?
´ 富士山などの聖地におけるマナーやモラル対策
9.まとめとして
´ 地域性に基づく地域創生
→観光業を主とした地域経済活性化を行っている自治体
→それぞれ対策を取っている。
´ 国籍や地域別に「おもてなし」対応しているわけではない。
´ マナーに関する問題は、日本人外国人関係のない問題→だが、対策が必要となって
くる。
例:富士山のゴミ問題、宿泊施設では事前対策として宿泊棟自体を離して部屋割りを
決めている etc.
´ マナー問題については、送り出し側である外国人たちも日本について知り、理解す
るべき。
´ 産業(主に、輸出向けのワインや絹織物)と観光を一体化して地域創生を打ち出し
ている。⇒例:知事のトップセールス、海外の都市にアンテナショップあるいは出
張所を設置。
´ 地域住民をいかに巻き込んで地域活性化対策を行うのかが重要となる。
(行政の仕事だから関係ない、静観している、など地域住民は他人事と捉えている
のか?)
10.研究課題として。
1.わからないのは地域差が激しいこと。山梨県は観光資源が豊富。県庁としては県全
体を盛り上げていきたい。ただ地域住民や観光業関係者の中には、日本人で十分と
いうところもある。
2.少子高齢化による日本人観光客数の減少への具体的な取り組みが見えてこない。な
ぜ対応しないのか、(「できない」という事情もある?)
3.5圏域それぞれ細かく調査する必要がある。
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