2018年度前期発表3 アニメと宗教 その2

聖地巡礼という言葉が流行する前から神々はアニメや漫画で描かれてきた。それは神々の持つ性格や神話の持つ物語性などが、アニメや漫画の題材となりやすいからである。ただ近年見られる傾向として、実際の地域や街並みを繊細に描くことで聖地化を企図したアニメが制作されていることや、神自身を題材にしたアニメや漫画(その多くが神道やアニミズムに分類することができる)が数多く創作され、かつ若者受けする描写で神々を登場させていることが挙げられる。これらの傾向は何を示しているといえるだろうか。個人的な見解として、万人への親しみ易さがあげられると同時に、現実との距離感、すなわち2次元の世界があたかも現実で起きているかのような錯覚をもたらしているといえよう。
しかしながら、本来なら神は威厳があり、崇め奉る存在である。神聖であるはずの神が世俗的なアニメや漫画に登場し、かつ現代の若者文化に受け入れられるような描写となることは、若者文化における新たなスピリチュアリティの潮流といえるのだろうか。あるいはまた、聖なるものと俗なるものの境界線が曖昧であることから、新たなシンクレティズムともいえるのだろうか。
宗教人類学の視点からでは、アニメ・漫画と既存宗教との関係は、現状ではそう簡単に論じることができないといえるだろう。

その1

鷲宮神社境内の絵馬掛け所

現代研究会

「文化と社会に関する様々なテーマ、諸問題を取り上げ、過去から未来への歴史的視野で考察し、議論を行う」ことがこの研究会の目的です。