2022年度後期現代研究会発表10 台湾社会の特徴とは ― 新型コロナ禍とウクライナ危機下の社会

2022年度後期現代研究会発表10

台湾社会の特徴とは ― 新型コロナ禍とウクライナ危機下の社会

2023年1月21日

村瀬洋一

 村瀬は8月15日から1年間の在外研究となった。台北郊外の輔仁大学にて研究室を1つ借りてお世話になっている。2008年には韓国に半年、台湾に半年住んだので、十数年ぶりの滞在である。今回の発表は、台湾に住んでみての雑感ではあるが、社会の特徴とは何か、ということについてお話しする。台湾は、多言語、多文化社会であり、社会を観察すると興味深い点が多い。もしみなさんが海外に住んだ場合は、気温、味、匂い、仕事や経済、価値観、人間関係が違うということで、様々なカルチャーショックがありうる。台湾人は、日本人ほど細かいことを気にしないし、自由な雰囲気があるが、どんな社会にも、マナーや習慣や規則が存在する。

 8月と9月は連日、35℃以上が続き、大学に行くだけで疲れてしまい体力を消耗した。台湾人の様子を見ていると、かなり汗をかくのに地下鉄内は清潔で、東京のように臭いこともなく、人々の表情も穏やかである。東京の電車内はみんな疲れた顔をしているが、台北ではそれほどでもないのが謎だった。おそらく、東京ほど残業が多く長時間通勤で、みんながストレスを感じて疲れているわけではない。しかし最近では、通勤に30分以上かかる人も増えてきたようだ。以前はバイクで20分以内、長時間の通勤は嫌だ、という人が多かった。地方都市では車通勤も多いが、バイクしか持っていない人も多い。台北に主な地下鉄路線は7本しかなく、東京のJRや私鉄にあたるものもほとんどない。東京ほど大きな街ではない。日本の地方都市に近い、と考えれば、人々が穏やかで親切なことも理解しやすいだろう。海外に住むというのは、色々なストレスがあるが、台湾は暮らしやすく日本人にとってはストレスは少ない。日本食も手に入るし、治安が良いから。

 台湾人の多くは閩南人とよばれる福建系である。海洋民族で、威勢良く元気に話すことが重要。あまり遠慮せず、ものをはっきり言うが、謙虚さは重要とのこと。他人の意見を気にせずに大声で自分の意見を主張する傾向がある。しかし概ね、優しい人が多い。もちろん、実際には色々な人がいる。台湾人の人柄としては、親切で思いやりがあり、見知らぬ他人への警戒感が低く、あまり厳しいことは言わない。しかし、他人にあまり深く関わらない。一人で食事している人もたくさん見かける。その点は韓国とは違う。仕事などについての厳しさは、日本ほどはなく、大学でも、遅刻した学生が怒られることが少ない。仕方がないことだ、と考える傾向がある。教室で朝ご飯を食べたり、遅刻したら、日本では強く怒られるだろうが、その点は違う。朝も外食で、職場や学校で朝ご飯を食べるのが普通である。ただ、あまり酒を飲まない。日本のように、職場の飲み会というのはない。大学も、酒を伴う歓迎会のようなものは、まったくない。6時くらいで仕事を終えて家に帰る人が多いが、しかし残業もわりと多いようだ。飲み会で親睦を深め、本音を出すような部分はない。日本人にとっては、本音が分かりにくい。多くの人は親日的であるが、中国本土系の老人で、かなり高齢だと、日中戦争を経験して台湾へ来た人もいる。台湾人の頭の中は複雑である。ただ多くの若い世代は、現代日本人と同様、歴史にはあまり興味はない。日本占領期の前は、台湾は清朝の領土だったが、清は満州族であり、中華民族ではない。蒋介石時代は兵隊も指揮官も文字が読めないくらい程度が低い統治で、暴行や略奪が多く、かなり治安が悪かった。今ではとても平和で、例えば、街では食べ物の支払いも後払いで、食い逃げを警戒されることもなく、店先にはたくさんの傘が放置され、盗まれることを警戒せず、人心がすさんではいない。徴兵制が廃止されて時間がたち、中国の脅威を感じることもなく、平和で治安がよい。ただし男性は4ヶ月の軍事訓練の義務がある。12月末に、今後は1年間に延長するという発表が政府からあった。台湾防衛に必要だからやるのであり、アメリカからの圧力はなかった、と記者会見で蔡英文総統が言ったが、誰も信じないとのこと。

 地下鉄のスリなども少なく暮らしやすいが、必ずしも、のんびりした南国ではない。中国本土の不景気や、株価下落や、不動産バブル崩壊の影響があり泣いている人が多い印象。学内のビルで飛び降り自殺など、大学生の自殺のニュースもある。蒋介石が敗残兵を率いて台湾に来た時は治安が悪化していたので、古いビルはすべて鉄格子がはまっているが、現在の台湾は治安が良い。

 国民総背番号制であり、全員が、自分の番号は記憶している。女子高生の制服の胸には、高校名と学生番号が刺繍してあるが、とくにそれに疑問を持つこともないようだ。警察官がいばっていることもない。身分証を携帯することは義務だが、実際には、持っていなくても何も言われない。ただし、身分証不携帯の場合、警察官は、無条件で身柄拘束ができるという規則になっている。日本人が身分証を常時携帯しない、自分の番号も知らない、というと台湾人は驚く。男性なのにまったく軍隊経験がない人がいる、ということも、台湾人にとっては想像しがたい事である。

 海外で生活していてもっとも問題になりうるのは、治安と健康だが、治安に関してはとくに問題はない。屋台の食べ物を食べたり、水道の水でお腹を壊したこともない。ただ水道の品質は悪く、歯磨き程度は問題ないと言われるが、台湾人は水道水を飲むことはない。会社や学校、地下鉄駅など、各所に浄水器があり、台湾人は大きな水筒を持ち歩いており、その水をくんで飲む。台湾生活で一番困るのは、暑いから出歩くことが減り、夏は運動不足になりがちだし、砂糖が何かと多くて太ること。食堂の無料の麦茶や、ペットボトルのお茶が甘い。無糖のお茶を探して買うようにしている。しかし台湾人は、すれ違う人たちも、太っている人が少ない。普段は小食な人が多いようだ。屋台の小さな食べ物1つを、家族数名で分け合って食べている人も見かける。酒を飲んで太ることも少ないのかもしれない。豊かになってきたが、日本人ほど贅沢ではない。自動車の運転マナーは悪く、かなりの乱暴運転なのは問題。以前よりは減ったが事故も多い。歩行者優先ではないから、車にひかれそうになることがある。アメリカに住んだ時は、中古車を買って快適な生活だったが、台湾で車を持つのは最初から諦めていた。

 物価は全般的に安いが、二重経済かもしれない。伝統的な市場や夜市は安い。近所の100元の弁当(420円)で野菜を4種類選んで、ご飯と肉がついて満腹になる。レストランは350元以上(1500円)。庶民的な食堂は100元くらい。スターバックスは最低120元以上であり、日本より高い。ビッグマックは70元。日本では、今は400円くらいする。卵や牛乳は日本より高いが、普通に生活していると、日本より物価は安い。しかし給料も安いので、普通の台湾人は、それほど楽な生活ではないかもしれない。

 価値観としては、細かいことを気にしないし、日本人ほどは気を遣わないので、無神経に見えることがある。元気に大声で話すが、中国人ほど大きな声ではない。性格としては、日本人と中国人の中間くらいかもしれない。また、お金が好きとはっきり言うし、お互いの収入を隠さない。お金持ちになって家族が繁栄することが重要という価値観が強い。お金儲けの話しが恥ずかしいとは思わない。また、先生に贈り物を持ってくる習慣があるのは日本人としては困る。

お互いに給与明細を見せ合い、株や不動産投資の話しをすることを好む。年収の10倍のローンを組んで不動産を買うことも普通。値上がりするし問題ない、という価値観。知人は年収600万円くらいなのに、8千万円の築40年のアパート(日本でいうマンション)を買ったそうだ。5階建ての5階だがエレベーターがなく、外見はとても古い。屋上部分は違法に増築しているものがとても多い。最上階でないと、上の階の騒音がひどいことがある。玄関も廊下もないので、ドアを開けるとそこが居間である。設備には色々と問題があるが、内装はとてもきれいにしている。100平米以上あって広く、大家族制に対応していることもある。庶民が日本のような庭付き一戸建てを買うことはほとんどなく、すべてアバートである。一戸建て市場がほとんどないという点は、先進国とは違う。

町中で歩道がでこぼこなのは困る。各店が自由に、歩道を改造している。椅子や机を置いて飲食することもある。屋外での飲食は、日本人は拒否感を示すことがあるが、そのようなことを気にしないなら生活は便利。

 トイレは水圧の問題で、紙を流せないことが多く、使った紙は便器に流さず、ごみ箱に入れることが多いが、最近は、水によく溶けるトイレットペーパーがたくさん売っている。しかし、清潔さへの感覚が、日本人とかなり異なるし、日本人に取っては、屋外に椅子や机があって、庶民的な食堂や屋台で食事している人たちを見ると、あまりよい印象を持たないことがある。先進国の感覚とは違う。しかし、2008年に住んだ時と比べて、かなり街はきれいになった。豊かさの蓄積を感じる。以前は服装も、日本人とはかなり違ったが、最近は、街ですれ違う人たちは、日本人と変わらないしおしゃれをしている人も多い。夏はとても暑いのに、女子大生の髪は長く、日本のようなショートカットの人がとても少ない。しかし、夏はどこも冷房がよく効いているし、日本のような長時間通勤の人は少ないので、髪が長くても案外、問題ないのかも。今は毎日、シャワーを浴びて髪を洗う人が多いが、バスタブはないことが多い。

コロナ禍について

 コロナに関しては、台湾人はあまり慣れていない印象。まだまだ警戒感が強く、行動がかなり慎重。1年前はほぼ感染者ゼロだったので。6月15日より、台湾入境後の在宅検疫の期間を3日間に短縮することを発表。6月から研究者ビザが出始めた。6月末にビザを取って、7月の教授会で海外出張が承認され、社会調査の仕事などしつつ8月から台湾に住み始めたので慌ただしかった。8月に入国時は、実質的には4日館の自宅での隔離と、4日館の自主防疫期間だった。後者は、少し買い物をしたり、地下鉄に乗ったりすることは、問題はないが、大人数での飲み会などは控えなくてはならない。10月半ばから海外から台湾への観光客の入国も可能になった。輔仁大学へも自由に入構できるようになった。それまでは大学の身分証提示が必要。マスク着用等の防疫措置を12月1日から緩和された。屋外でマスクをしていなくても罰金ではなくなったが、地下鉄内ではしなくてはならないし、マスクがずれていると、警備員や警察に注意される。警備員の数が多いし、元々、地下鉄内での飲食は禁止である。実際にはほぼ全員が、今でも屋外でマスクをしている。急激な政策転換ではあった。最近の台北だと警戒感低下もある。企業が盛大な忘年会をやり、感染もあるが、今では死者が少ないので、みんなあまり気にしないとのこと。

大学と就職、初任給

 大学のレベルは以前よりは改善したが、あまりよくはない。例えるならプロ野球のようなもの。日本と台湾では、やはりまだかなりの格差がある。今は台湾での最低賃金は時給168元(720円)、初任給の平均値は31000元(13万円)である。10年前の時給は300円だったから、かなりの上昇だが、まだ日本とは差がある。アルバイトを探してもないらしく。学部生はあまりバイトしない。学部を出てすぐだと仕事はないので、卒業後に、ゆっくり探す。日本のように、在学中に就職活動をして、卒業してすぐに正社員になる、というのはほとんどない。仕事がないので、大学院へいく学生が多く、留学への希望も多い。日系企業に就職した場合、会社としては、長い目で育てようとして研修をするが。台湾人は、数年で転職する人が多く、社内で人材を育てようとしても、あまり効果がない。半導体は好景気だし、この数年は就職も悪くないと言われる。優秀な人はたくさん仕事がある。就職して数年で給料が倍になることもある。人々の能力にかなりの差がある印象。

台湾社会の構造について

 多民族社会である。概ね、福建系の人(本省人、福佬人、閩南人、河洛人ともいう、いわゆる臺灣人)が7割、客家系1割、外省人(本土系)1割、原住民2%、その他、新住民(ベトナム、南アジア)。原住民はポリネシア系の人々であり、政府が認めた16部族がある。大学には必ず、原住民の入学枠がある。選挙区も、平地原住民区、山地原住民区がある。社会には大家族制が残る。新暦の正月は単なる休日であり、町中もとくに変わった様子はないが、旧暦の春節は重要。旧暦の大晦日はデパートやスーパーが5時で閉まる。しかし最近は、元旦から普通に営業している。レストランなどは6日館以上、閉まる所もある。昔から夫婦別姓である。嫁は名字が旧姓のままであり、結婚しても、夫と子供達が重要で嫁は家族の中に入れない感覚がある。離婚率が高い。春節と中秋節は親戚が数十人集まり宴会をする。親戚がとても重要。春節は鍋、中秋節は焼肉をやることが多い。端午節も親戚が集まる。お盆に集まる習慣はなく、墓参りもしない。長男の家に仏壇がある。家と家のおつきあいが大切で、娘に彼氏ができると、彼氏の両親からご挨拶があることもある。

 もともと、蒋介石の一派が台湾を支配し、彼の息子も総統になり、学校は台湾華語(標準語、北京語)で運営するし、少数派の中国本土系が主流派である。その意味でおもしろい社会。今の若い人たちは台湾華語しか分からない。田舎の親戚が台湾語(閩南語)を話すと、まったく分からない。なお漢語や普通語というのは中国本土の言葉。台湾では台湾華語という。台北は華語が多いが、台中や台南より南だと、台湾語を使う人が多く、華語の発音とはかなり違う。

 最近見た、大学のスーパーの仕事募集掲示は、正社員が月給26800元、アルバイトは時給173元だった。今のレートで、4.2倍して日本円に直すと、あまり高くはない。

台湾伝統宗教とは何か

 町中に宮や廟が多いが、実は仏教ではない。基本は中国的な伝統宗教や道教であり、仏教の寺とは違うが融合しているものもある。中国の昔からの土着宗教と、道教や儒教などが混ざったものが台湾伝統宗教である。元々は、中国の神仙思想や祖先崇拝、呪術から始まっている。宮や道教寺院は、日本占領期は弾圧されたので、仏教の寺に姿を変えて存続した。

 台湾伝統宗教は、中国の伝統と、道教、儒教、仏教が混ざったもの。基本的な内容は祖先崇拝と現世利益。学問の神様もいるし、商売の神様もいる。銀行や商店の前で、お供えも物を並べて、あの世で使う神のお札を燃やしていることもある。これは商売の神様への供物である。社会調査の結果(ISSP2018)を見ると、日本人は過半数が無宗教と答えるが、台湾人は、台湾伝統宗教という回答が多い。赤い柱が好きで、神様がたくさんいる。上位に媽祖のような女性の神様がいるし、それらの点で日本の神道に似ている。神道と違う点は、昔から文字があるので、老子の経典など、文字として残っているものがあるということ。一番偉い天帝や、女性の神様や、老子や関羽などが代表的な神様。日本の天照大神は太陽信仰だが、媽祖は実在の女性が元になっており、元々は航海の安全の神様。今では開運や家内安全など幅広い御利益があり、閩南人にとても人気がある神様とのこと。一般論として、親族ネットワークが強固であり、都会に出てきて孤独な人は日本よりは少ないためか、新興宗教が入りこみにくいが、少しはある。多くは仏教系の形をとる。宗教の影響か、菜食主義者が多い。ただ、元々牛肉を食べない文化がある。町中に牛肉麺の店を見かけるが、実際の台湾人は、まったく牛肉を食べない人が今でも多い。

時事問題について

 ロシアのウクライナ侵攻は台湾でも大きなニュースであり、ウクライナに同情的である。大国に蹂躙されてウクライナ人は気の毒だ、明日は我が身か、中国の台湾侵攻は近いうちにあるか、ということに興味があるそうだ。地下鉄の中で、年配の人たちや中年女性がスマホの動画ニュースで、習近平の三期目はどうなるかなど政治のニュースを見ている。中国本土は報道統制の影響が大きく、プーチン支持者も多いようだが、台湾人と話すと、ロシアの非道は許せないし、ウクライナを支援すべきという声が大きい。大学の文化祭にて、屋台がたくさんあったが、ウクライナとボーランド支援、という看板がたくさん出ていた。ただ実際のところ、台湾がウクライナを大きく援助しているわけではないし、香港で言論弾圧があっても、香港からの人たちを台湾が積極的に受け入れるわけではない。国益や外交というのは、そういうものだ、とのこと。大学に香港人学生はいるし、言論の自由についての議論はあるのだが。

 個人的には、1月12日の日米2+2会談で、アメリカ国防長官が、日本の敵基地攻撃能力を高く評価する、と発言したというニュースには驚いた。専守防衛を逸脱する完全な憲法違反を、国会で議論する前に、日本政府が米国政府に説明し、米国が支持を表明する、というのはとても奇妙なことだ。しかし、アメリカの視点だと、中国の野望を止めて、東アジアの平和を維持することは重要だし、日本の防衛費増、台湾の兵役延長により、アメリカの負担なしで平和を維持できれば意味がある、という理屈になるだろう。台湾に米軍基地はないが、台湾軍のレーダーは、沖縄の米軍司令部につながっているとのこと。

 今回は、8月の出発前に、台湾に住む予定と言ったら、色々な日本人に、冗談半分ではあるが、戦争になったら大変ですね、と言われた。だが実際の台湾人は、あまり危機感はなく平和な雰囲気である。台湾人に言わせると、台湾を統一すると、中国は10年以上ずっと言っているが何も起きないし、危険が差し迫っているとは思わない、という反応が多い。そもそも今の中国軍では大きな作戦はとても無理で、あれは張り子の虎とのこと。大型強襲揚陸艦は3隻しかなく、台湾軍のように米国製戦闘機を持っているわけでもない。中国の上陸作戦能力は2万人程度で、台湾軍数十万人と戦争など実際には無理。米国のペロシ会議長が台湾を訪問したら、台湾周辺で、中国が軍事演習をしたわけだが、とくに台湾の株価が落ちたわけでもない。今後、中国が軍備を増強したらどうなるか分からないが、当分は、台湾への軍事侵攻など無理な話しである。中国政府はずっと統一への野望を持っているのは確か。台湾人は、中国本土に色々なつてがあり、多くの情報が入ってくるが、中国政府の上層部の考え方は簡単である。つまり、米軍が出てくるならやらない。出てこないなら台湾へ侵攻してもよい、というだけだ、とのこと。台湾人は中国人が何を考えているかはよく分かっている。台湾が一方的な弱者ではない。情報もたくさん入ってくる。台湾には米国製の戦闘機や武器がたくさんある。台湾がすぐにやられてしまうし、戦争の危険性が高い、と考えるのは現実的ではない。ただ,今の台湾政府は、徴兵制にも否定的で、軍事予算は削減してきた。軍隊はどこでも巨大な官僚組織であり、何かと危機をあおり、予算獲得を目指すが、それほど危機が迫っているわけではない。ただアメリカは台湾にステルス戦闘機を売ってくれない。中国に技術が流出すると困るのだろうが、信用されていないことは不満。日本や韓国は持っているのに、とのこと。

その他、違和感を感じること

 台湾人と話していると、親戚は金持ちだから米国に移住した、という話しをよく聞く。日本ではほぼ聞かない話しだ。実はアメリカ国籍を持っていて、アメリカのパスポートがある、という人もいる。また、中国本土との人脈が多い。中国本土の状況は手に取るように分かる。知り合いの男は、上海勤務の間は給料が倍になっていた、とのこと。中国との商売を活発にして、経済を活性化することが重要。ペロシ議長が台湾に来て、中国を刺激するとか、余計なことはしないでほしい、という態度の台湾人も多い。最近は、ベトナム人、インドネシア人の労働者が多い。日本のように、外国人労働者を拒否する外交力はない。日本は小さな国ではない。台湾人にとって、日本は5倍の人口があり、経済力はもっと大きい巨大な国。戦争になったら助けにきてほしい、アメリカと一緒に中国と戦ってほしい、と思っているが、日本に憲法9条があり、戦争ができないということは知らない。あなたは男なのに、本当に、まったく軍隊の経験が無いのか、何かはあるでしょう、と言われたことがあるが、日本人はまったく軍隊経験がないのが普通である。ただ、韓国ほど、軍隊の組織が大きくはない。韓国の田舎をドライブすると、必ず軍隊の基地があるが、台湾では、そんなことはない。

 ショウガ、ニンニク、唐辛子の量が多いし、食べ過ぎてお腹を壊すこともあるかも。冬も湿度が高い。湿気とストレスで皮膚病になった、という日本人がいた。気候が会わない部分はある。何でも美味しいが、台湾のコンビニのパンやサンドイッチは、パンがカスカスでまずい。昔の日本もそうだったのだし、まだ、豊かな国ではない、と感じる。ただ、これは単に、日本のコンビニのレベルが高すぎなのかもしれない。デパートの地下で日本食品を買えば、値段は高いが、生活には困らない。

 まとめると、日本社会と台湾社会との共通点としては、急激な産業化と都市化、儒教や祖先崇拝等の影響、公教育や健康保険が充実していること、などを挙げることができる。異なる点は、多文化社会で複数の言葉がある、産業構造は、日本は大企業主義、また、民主化の歴史や、軍と財閥、教育の質、就職などは、大きく異なると言える。日本の方が都会の孤独な人が多く、新興宗教が盛んだった。日本は、高度成長期は1億総中流と言っていたが、最近は格差社会とよく言われる。台湾に関しては、最近は格差が拡大しているのかどうか、まだ未解明な部分がある。就職の機会や安定した生活、という意味では、日本人の方が恵まれている部分はある。台湾は多文化社会だが、最近の若い人は華語で統一されつつあるし、社会が安定してきており、共通のマナーや規則を、設定しやすくなりつつあるかもしれない。

 台湾政治は先進的な部分もあり、現総統の蔡英文は台湾大法律系出身の女性だし、コロナ対策など評価されている部分もある。しかし11月の地方選では与党が大敗した。物価上昇や政治的腐敗への批判は強い。日本よりも物価上昇はかなり目立つ。

2018年 原住民族語言發展法

2019年 アジアで初めて同性婚合法化。世界では27番目。

 選挙では女性優遇枠があり国政のクォーター制がある。ただ兵役義務は男性だけであり議論はある。台湾では、会社でも女性の営業が活躍するなど、各分野で女性が目立つが、一つには、中国本土の共産党への対抗心があり、男女平等だということを示さなくてはならない。また暑い国は元々、あまり男性が働かず、女性が強い伝統がある、という俗説もあるが、本当のところは、よくは分からない。今は左翼政権なので、日本よりも先進的な政策もある。