2021年度後期現代研究会発表10 日本人と宗教―なぜ日本にはキリスト教信者が少ないのか―
2021年度後期現代研究会発表10
日本人と宗教 ―なぜ日本にはキリスト教信者が少ないのか―
2021年12月18日
桑原真弓
街はクリスマスのイルミネーションに彩られ、クリスマス商戦真っただ中。「クリスマス」と銘打ったイベントの宣伝があちこちで見られ、皆、何となく心が浮き立つこの季節。ふと不思議に思う。結婚式はキリスト教式で挙げるカップルが半数以上いる。10人に1人はキリスト教系教育機関に通ったことがある。しかし、実はこの国のキリスト教徒は人口の1%しかいない。それは何故なのか?
16世紀、ヨーロッパの宣教師たちは南蛮貿易を利用し、ヨーロッパの珍品とともにキリスト教を広めようとした。一方、日本人は舶来品の流通により経済的利益を得て、新しい文化も学べると歓迎した。が、豊臣秀吉はヨーロッパ人の征服から国を守るため禁止する。以降、160年に渡る禁教政策の影響はかなりあったと思われる。初期に行われたキリシタンによる救貧活動により信徒の多くが身分の低い者ばかりになり、自分も下層民だと思われることを恐れたり恥じたりするキリシタンが出てくるという問題も生じたという。また、さまざまな学問を教えようとするあまり、偉そうにしていると日本人が感じてしまうような宣教師や、日本人を低く見て、長く日本に暮らしているにも関わらず、日本の風習や礼儀を全く覚えようとしない宣教師がおり、これが日本人に対する侮辱と捉えられ、広まりにくかったという面もある。
明治時代になると、日本人は改めて西洋の文化・学問に関心を持ち、英語が使えれば仕事で有利になると考えるようになり、また米英からの宣教師は宣教のきっかけを求めるために積極的に無料で英語を教え始める。が、日本人はキリスト教を精神的なものとしてではなく、単に「先進国の進んだ文化」「何かハイカラな知的文化」として受け入れるにとどまった。
現代ではキリスト教徒が組織的に神社仏閣を破壊することはないし、国を奪うこともないだろう。また日本には信教の自由があり、キリスト教徒であることで不利益を被ることはない。それなのに何故か?
どうやら日本人は「敬畏すべき神」を忌み、家の守護神、地域の鎮守といった「親しみやすい神」を慕うという傾向があるようである。それに対し、キリスト教というものは、まず何よりもおのれの罪を自覚させ、悔い改めを迫り、神の栄光に奉仕することを求める宗教である。この辺りに理由があるように思われる。
0コメント