2021年度後期現代研究会発表5 アニメと宗教

2021年度後期現代研究会発表5

アニメと宗教

2021年9月25日

小村明子

「アニメと宗教」というタイトルでこれまで同テーマで幾度かの発表を行ってきたが、本発表では、これまでを踏まえてより包括的な視点で本テーマについて考察を試みた。

これまでの発表においては、日本のアニメの中でどのように神仏が描かれているのか、また神社仏閣でのアニメ・キャラクターの使用について幾つかの事例を紹介した。近年アニメの中で宗教事物や聖人を扱うものが多く制作されている。また現実世界においても、アニメキャラクターなどを描いた絵馬やお守りなどアニメが宗教グッズに描かれて神社仏閣で取り扱われることで、アニメファンの興味の目を向けることができる。だが、インターネットの動画配信と翻訳機能の発達によって、瞬時に全世界に日本のアニメが配信されるため、過去において、宗教事物を使用したことによる問題が海外からの指摘で発生している。そこで、本研究テーマにおいては、なぜアニメ作品に宗教の聖人や宗教と関連のある事物を使用するのか。またそこには、宗教が世俗なものと関連づけても問題はないとするような日本人の宗教性が関わっているのかを考察することを目的とした。

 主に、アニメの登場人物たちを宗教グッズに描いて神社仏閣で取り扱う事例はそれほど多くあるわけではない。実際に、フィールドワークを行うと、アニメキャラクターが描かれている絵馬やお守りを扱っているところは神社が多い。この現象を単純に宗教ビジネスとして考えることもできるが、お守りを受ける側となる購入者は必ずしもアニメファンとは限らない。また日本人の宗教性を考える上では、さらにフィールドワークを行って精査が必要とされる点でもある。

そこで、今度は視点を変えて、アニメにおける宗教性を見てみることにした。これまで制作されたアニメ作品の中では、実世界で信仰されている神が描かれているものがいくつかある。では神仏をどのように描いているのかといえば、神仏の個性をそのままアニメに生かしているものが多く見られる。また市販されているアニメ作品のグッズには、絵馬やお守りの形をしたものもある。もちろん、神社仏閣でお祓いをしたものではないので、グッズそのものに宗教性はない。だが、アニメ作品のグッズをわざわざ絵馬やお守りとして売り出すのはなぜなのか。アニメのキャラクターグッズを制作・販売するならば、お守りや絵馬でなくとも売れる。この点においても、日本人が宗教に対して忌避していたとしても、何らかの宗教性のあるものを意図せずに信じている可能性を見出すことができるが、この点においても更なる調査を必要とする課題である。

現代研究会

「文化と社会に関する様々なテーマ、諸問題を取り上げ、過去から未来への歴史的視野で考察し、議論を行う」ことがこの研究会の目的です。