2021年度後期現代研究会発表6 人体は宇宙

2021年度後期現代研究会発表6

人体は宇宙

2021年9月25日

ラミチャネみなこ

人はどれほど人体について理解しているだろうか。医療などを専門としない限り、人体の構造について、またその働きについて考えることはほとんど無いのではないかと思う。肉体は我が物であるが、まるで我が物ではない完璧なシステムを持つ。それは私たちの意思とは関係なく生命を維持しようとするシステムであり、つまり私たちはこの肉体によって生かされている。

今回の発表では、ホメオスタシスのシステムと、血液とリンパ、筋肉と骨の働きについて考察した。

■ホメオスタシス

ホメオスタシス(生体恒常性)とは、環境が変化しても体の状態を一定に保とうとする働きのことを言う。例えば体温について、暑い環境下では体温を下げるために汗を出し、寒い環境下では体温を上げるために体を震えさせて熱を出す。他に血液成分や免疫機能などを一定に維持する働きを持つ。怪我をすれば修復作業のため膿が出ることなども自動的に行われる。また内的ストレス(疲労、感染など)で生じたダメージに対しての働きもホメオスタシスによる。

ホメオスタシスは、視床下部が司令塔となり、自律神経、内分泌系、免疫系がそれぞれ情報交換し合って働きをなすシステムと言われている。その働きは常に完璧であり、常にフィードバックが行われていると言う。

① 自律神経:呼吸、心拍、血圧、体温、発汗、排尿などをコントロール

② 内分泌系(ホルモン):正常な代謝機能の維持、消化液の分泌調整、様々な機能の調節

③ 免疫系:生体を細菌やウィルスなど様々な病原体の侵入から守る

これらの働きは、体の変化に対し「水準値」からのズレを判断することによって始まる。

■血液とリンパ

血液は骨の中心部の造血幹細胞によって作られる。血液の主な仕事は、赤血球中のヘモグロビン(鉄分)に結合した酸素を、全身の細胞に与えに行くことである。血管に入った血液は、心臓の拍動によるポンプ作用により、全身を巡り酸素や栄養を運ぶ。

毛細血管から外に出て、酸素や栄養を運び終えた血液は「組織液」と呼ばれる。赤色のヘモグロビンが無くなるので、組織液は薄黄色である。老廃物を含んだ組織液は静脈に回収されるが、回収しきれない組織液はリンパ菅に入り、リンパ液となる。

リンパシステムとは、体の水分量を調節するシステムである。皮下の毛細リンパ管から回収されたリンパ液は、全身を巡り鎖骨部分の静脈と合流し排泄へ向かう。

リンパ液に含まれた老廃物とは、主に死んだ細胞であり、他に不要なタンパク質や脂肪、化学物質、細菌やウィルスのことである。排泄経路は腸(大便)、腎臓(小便)、皮膚(汗)、肺(呼気)に分かれる。

また、リンパシステムは免疫機能も担う。リンパ管に取り込まれた細菌やウィルスなどは、リンパ節で濾過され全身に巡るのを食い止められる。そのため、リンパ節には菌やウィルスを退治する白血球が集中している。この白血球の状態をコントロールしているのが自律神経であり、その働きにより免疫力が決まる。

■筋肉と骨の働き

筋肉と骨については、きくち体操を考案した菊池和子さんの著書からの文章を抜粋させていただいた。(菊池和子著/「意識」と「動き」で若く、美しく!きくち体操/いきいき株式会社より)

「私たちの体にあるおよそ206もの骨は、すべてバラバラで、絶妙に組み合わさっています。そのおかげで、さまざまな動きが自由にできるように作られています。骨は毎日生まれ変わっています。骨は、生まれてこの方休むことなく古い骨の細胞を壊し、新しい骨の細胞を作り出しているから、今日のあなたの骨があるのです。

脳から足の指先まで、全身を巡る血液が、あなたの骨の中で毎日休みなく作られているのを、いったいどれだけの人が知っているのでしょう。

大切な骨を育てていくのは筋肉の力です。筋肉を動かす刺激で、骨は新しく生まれ変わることができるのです。骨と筋肉は実に密接に関わっています。骨は筋肉を動かす刺激がなければ育ちません。」

これらの文章から、私たちは動くことで生きる生命体なのだと、改めて気付かされる。そして肉体の中で、意思により動かせるのは運動のための筋肉だけであり、日々有効に動かさねばならないことがわかる。

ここまでが今回の考察で、以下は自分なりのまとめである。

■まとめ

人の意思とは関係なく、体は生命を維持するために、一生懸命休みなく働いてくれている。私たちはまずそれを理解せねばならない。体の本来の働きはフレキシブルで学習能力も高く、細胞は互いに情報交換し、助け合いながら目的を果たしている。それはまるでどこかに存在する肉体の雛形からの情報を得ているようでもある。

この体に魂(心:感情、思考)が宿ることで個の生命が始まるとするならば、個の本質はやはり心の部分であるように思う。肉体は今を生きるため、経験するために与えられた乗り物であるとも考えられる。

私たちはこの乗り物である肉体の扱い方を、実はよく知らない。どのように動かし、どのように休ませ、どのような心で向き合い、どのように育てればいいのか、きちんとしたマニュアルがない。もしも何らかのトラブルが起きたとしたら、医学にポンと身を委ねてしまう社会に生きている。本当にこれで良いのだろうか。

私はオイルマッサージによるボディセラピーを生業とする中で、体の健康について向き合うチャンスを得た。まず私たちが体の健康のためにできることは、あらゆる筋肉を使って体をマメに動かすこと、そしてそれらの筋肉を柔らかく保つこと(血流やリンパの流れのために)である。私たちが体の中で意図的に動かせるのは運動の筋肉しかないのだ。

そして心のリラックス、感情や思考のコントロールが健康には欠かせない。体のシステムは完璧である。そのシステムの邪魔をするのが得てして心の動きである。食べ物も体のシステムに影響を与えるが、その食べ物を選ぶのも心である。

私は、「精神性の向上」が生きる目的であると考えているが、この人生を体験するために得たこの体を大切に考えることこそ、より精神性の向上に繋がるかもしれないと思う。心も大事であるが、体には常に感謝するべきである。

以上

追記)私の体験からの健康情報として「脱力で真っ直ぐあることが理想」「食いしばらない」をお伝えしました。

現代研究会

「文化と社会に関する様々なテーマ、諸問題を取り上げ、過去から未来への歴史的視野で考察し、議論を行う」ことがこの研究会の目的です。