2021年度後期現代研究会発表1 「宗教界全体の問題」「日本社会全体の問題」というのは本当か?
2021年度後期現代研究会発表1
「宗教界全体の問題」「日本社会全体の問題」というのは本当か?
2021年9月4日
杉平敦
これまでの発表において、日本社会で「宗教はアブナイ」と言われるようになったのが1990年代であったことが確かめられていた。また、その最大の要因が「オウム事件」であったということも推測されていた。しかし、「オウム事件」だけでは、宗教全般を一括して「宗教はアブナイ」と見なす理由としては、明らかに不十分である。そこで、「知識人の発言やマスコミの報道が世論をそのような宗教観へ導いた」という仮説を立て、これを検証すべく、「オウム事件」以後に積極的に発言した知識人らの発言内容を調査した。
調査対象とした知識人3名の発言内容から、その当時の知識人の間で、「オウム事件」を「オウムだけでなく宗教界全体の問題」「我々日本社会全体の問題」と見なす傾向が存在していたらしいことが理解できた。しかし、それがマスコミを通じて世論の形成に影響を与えたということは、確証が得られていない。当時実際に放映されたテレビニュース等での知識人らの出演回数・発言内容等を調査する必要があるだろう。また、「宗教界全体の問題」とか「日本社会全体の問題」という言い方にしても、論者の間で意味の違いが見られ、その中から何が選ばれていったのかを探っていく必要もある。
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