2020年度後期発表13 イスラームの預言者ムハンマドは本当は何を考えていたのか(何をしたかったのか)?
2020年度後期発表13
イスラームの預言者ムハンマドは本当は何を考えていたのか(何をしたかったのか)?
茂木明石
2021 年 1 月 16 日現代研究会報告要旨
本報告は、イスラームの預言者ムハンマドについて報告者が最近抱くようになったいくつかの仮説に基づいている。それは、ムハンマドが本当に目指していたのはユダヤ教・キリスト教・イスラームを超越した(あるいはそれらの違いを越えた)一神教の創設ではなかったかというものである。ユダヤ教・キリスト教という既存の一神教と彼自身の一神教運動とを糾合・統一して一つの宗教にまとめ上げ、その勢いのままエルサレムを征服し、エルサレムで彼の宗教を打ちたてる。ムハンマドの目指す一神教は、イスラームすら越えたものである。
これはクルアーンその他イスラームに関連する文献を長い間読んできて、報告者が感じるようになったことである。ムハンマドの宗教運動は、イスラームの枠に収まりきらないものを多く含んでいる。というよりも、クルアーンの中にイスラームはまだあまり明確にその姿を現してはいない。エルサレムからメッカに礼拝の方角を変えたのは、ムハンマドにとって一時的な路線変更にすぎなかったのではないだろうか。ムハンマドは、エルサレムに対して狂気のような憧憬を抱いていたのに違いないのである。
報告者は、本報告において以上のような仮説に基づいて、クルアーンの中で旧約・新約・クルアーンが合わせて言及されているものをいくつか列挙して考察した。クルアーンの中には、クルアーンよりも旧約の啓典に重きを置いているもの、旧約・新約・クルアーンを対等のものとして言及しているもの、ユダヤ教・キリスト教・イスラームの違いを越えた一神教への志向が垣間見えるものまで含まれている。クルアーンに記されているこれらの文言を考察することによって、ムハンマドが本当に目指していたもの(考えていたこと) は何だったのかを可能な限り追及してみたい。なお、報告者は、いつの日か、私の思いを仮託したムハンマド伝(学術研究ではなく文学的な方向性で)を書いてみたいと考えている。
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