2020年度前期第2回現代研究会報告

日時:2020年6月6日(土) 13:00~16:30

場所:オンライン(Zoom会議室)

参加者(13名)

発表1

発表者:実松克義

テーマ:日本の新宗教(戦後編)

内容:戦後日本で注目を浴びた主な新宗教が時系列的に述べられ、その出現理由が歴史的背景とともに解説された。五つの段階があり、Ⅰ.神々のラッシュアワー(新興宗教―創価学会、霊友会、立正佼成会ほか)、Ⅱ.精神世界の目覚め(新々宗教―GLA総合本部、阿含宗)、Ⅲ.小さな神々(イエスの方舟、など)、その他(真如苑など)、Ⅳ.トワイライトゾーン(オウム真理教、幸福の科学)、Ⅴ.アニメ宗教?(らき☆すた、聖☆おにいさん、など)である。I.は1945年の日本の敗戦直後に、Ⅱ.は60年代の高度経済成長時に、Ⅲ.はその後、70年代後半の「しらけの時代」に、Ⅳ.は80年代後半のバブル期に、そしてⅤ.はバブル崩壊後、90年代後半から登場したものである。これらの新宗教を鳥瞰すると、その存在理由が現実的な問題の解決から人間としての精神的充足へとしだいに変化していることがわかる。量から質への変化と言ってもよい。例えばⅠ.は敗戦によって旧価値観が瓦解した日本社会・文化の真空地帯に増殖し急成長したものである。またII.の出現は急速な経済発展の結果蓄積した自然破壊、人間疎外の状況という時代背景を持つ。Ⅳ.はあきらかにバブル期の時代精神の象徴である。したがってこれらの新宗教の盛衰はそのまま戦後における日本社会・文化の遷移を反映していると考えられる。オタク文化、アニメ宗教?が流行る現代は不安なアモルフォスの時代である。発表後、多くの質問、コメントがあり、疑問点・問題点が議論された。詳しくは後日のHPエッセーを参照されたい。


発表2

発表者:細川啓子

テーマ:占いを信じるということは=信仰?か

内容:占いを信じることは信仰になるのか、というテーマについて、占いビジネスの実態を熟知している発表者が、実際の経験に基づいて報告・考察し、問題提起を行った。はじめに知られている様々な占いについての説明があった。次に実際の占いビジネスの現状が鏡リュウジ、細木数子、ゲッターズ飯田、江原啓之、スーザンミラー等の著名な占い師を例に説明された。彼らはいかにして集客・収入を得ているのか。有名になればなるほど講演会・著作物等に頼り、個人鑑定は行わないようである。次いでどういう人が占いを信じているのか、また日本人と宗教の関係が述べられた。多くの人が人生の節目の際に参考意見として占いに頼るが、何故生きているのかというより深刻な問題を問いかける人もいる。興味深いのは、日本人はほとんどの祝祭・行事にいい加減であるが、葬式だけは自分の宗派に従って行うことである。つまり日本人にとっても「死」は厳粛な事実であり、死の儀礼である葬式は特別な意義を持っているということだ。そこから日本人にとって宗教とは何か、信仰とは何か、という問題提起がなされた。宗教の本質は信仰にあるのか。だとすれば信仰とは聖なるものの力を信じることなのか。最後に金銭的トラブルなどの占いビジネスの問題点が例とともに指摘され、宗教という視点からより真剣に取り組むべきであるという意見が述べられた。発表後、「占い」について、また「信仰」について活発な質疑応答、議論がなされた。詳細は後日のHPエッセーを参照されたい。

感想:

多くの参加者あり、盛会でした。しかし「Zoomで話すのは疲れる、聞いていた人はもっと疲れたのではないか」というのが正直な感想です。その理由は、話している時に聞き手(あるいはその逆)の反応がわからない、ということでしょうか。テーマが大きすぎて話が長くなったことをお詫びします。一日も早く通常の研究会に戻ることを切望します。また少し調べましたが、Zoomを使って、通常の研究会をやりながら、遠くの人はオンラインで参加する、ということができます。次回に説明します。秋以降は、この方法でやれたらと思っています。


現代研究会

「文化と社会に関する様々なテーマ、諸問題を取り上げ、過去から未来への歴史的視野で考察し、議論を行う」ことがこの研究会の目的です。