2019年度後期第3回現代研究会報告

日時:2019年12月21日(土) 13:30~16:40 

場所:立教大学 

参加者:10名 


研究発表の概要 

発表1 

発表者:竹内和正 

テーマ:地域通貨で地方創生? 

「地域通貨を導入することによって地方創生を実現することができるのか」という刺激的なテーマ で発表がなされた。地域通貨とは国が発行する法定通貨に対するもので、文字通り、ある特定の 地域でしか通用しない通貨である。すでに日本でも、高山「さるぼぼコイン」、「富山「エール」等、 休止中も含め数百の地域通貨が存在するという。地域通貨は法定通貨と併用される。このテーマ を扱った納村哲二『地域通貨で実現する地方創生』、また米山秀隆(富士通総研)等の研究レポ ートが紹介された。また地域通貨の歴史、地域通貨の類型が述べられた。加えて、近年注目を浴 びた実例として、西部忠等によって立ち上げられ、マルクス哲学者、柄谷行人によって推進された 「地域通貨Q」が取り上げられた。これはマイケル・リントンの考案した地域通貨LETSをもとにした ものである。金融経済グローバル化への反旗を翻すこの試みはほどなく挫折した。現在の状況で は地域通貨はポイントカードの域を出ない。またスマホのキャッシュレスサービスが強敵である。 結論として、地域通貨で地方創生を行うことは困難であるようである。 


発表2 

発表者:佐藤壮広 

テーマ:沖縄8mm フィルム上映会と地域映像アーカイブ

 沖縄出身の映像作家、真喜屋力氏の活動の軌跡が映像とともに紹介された。真喜屋氏は自らを「 活弁興行師」と呼ぶ。沖縄県内で撮影された8mmフィルム取集して公開し、沖縄各地で無料の 野外上映会を開催している。8mmなので当然音はなく、真喜屋氏はその「活弁士」として映像の 解説を行い、地域の人々との交流を重ねている。その意図は8mmフィルムという過去のメディア 媒体を通して人々の生活の記憶を掘り起こし、共有して再確認することによって、世代を超えて未 来につなぐことにある。そのよい例として、沖縄県那覇市、若狭公民館主催の野外映画会の様子 が紹介された。60名ほどの人々が集まって楽しむその情景はあたかも遠い過去にタイムスリップ したかのようであった。真喜屋氏はまたこれらのフィルムを集めたオンライン情報サイト「沖縄アー カイブ研究所」を創設した。発表ではこのアーカイブからいくつかの作品が紹介され、解説された。 これらのフィルムは無料で鑑賞することができる。研究所のURLは次の通りである。

 https://okinawa-archives-labo.com/ 


特別発表

テーマ:香川県三豊市仁尾町「父母ケ浜」と歌による地域創生について 

ゲスト:河田倉治、ルナ憲一(ギタリスト) 

最後のテーマは香川県三豊市仁尾町の地域創生である。人口5,800人ほどのこの過疎の町は 古い歴史と豊かな伝統を持っている。特に江戸時代には瀬戸内海における物資の積出港として 栄えた。かつては狭い町内に25もの寺院があったという。現在の主産業はみかん畑を中心とす る農業である。この町に「父母ケ浜」という新しい観光地が出現した。その観光地を通しての地域 創生が始まっている。 このテーマに関して二人のゲストを招いた。仁尾町で生まれ育った河田倉治氏、及びギタリスト、 ルナ憲一氏である。 


実松克義:父母ケ浜―香川県三豊市仁尾町の地域創生 

テーマのイントロダクションとして、仁尾町の地理、歴史及び伝統文化の解説を行った。また日本 のウユニ塩湖として最近、脚光を浴びている観光地「父母ケ浜」をYou-tubeで紹介した。

 https://www.youtube.com/watch?v=lLt4mBFj5tc 


河田倉治:故郷の歌「父母ケ浜」ができるまで 

河田倉治氏は、生まれ育った故郷の町、仁尾町と父母ケ浜について思いを込めて語り、自分がい かにして「父母ケ浜」を作詞するに至ったのかを語った。 


ルナ憲一:ギター演奏「父母ケ浜」 

ギタリスト、ルナ憲一氏は「父母ケ浜」の作曲を担当した。アントニオ古賀の薫陶を受けたルナ氏 は日本有数のギタリストであり、また歌手・作曲家である。氏の演奏で「父母ケ浜」を聴いた。また 「荒城の月」、「ベサメムーチョ」を聴いた。生のギター演奏はすばらしく、演奏後は賛辞と質問が続 いた。ルナ氏はそれに応えて自らの経歴を語り、また音楽と芸術を語った。 You-tubeにあるルナ憲一「父母ケ浜」の演奏。 

https://www.youtube.com/watch?v=b85bqUqhlB4&list=PLKz9ZxGecMdQ3_9WIEqrQdQbY1- 6i5d4f&index=2&t=0s 


(敬称略) 

報告者:実松克義

現代研究会

「文化と社会に関する様々なテーマ、諸問題を取り上げ、過去から未来への歴史的視野で考察し、議論を行う」ことがこの研究会の目的です。