2019年後期 発表1 鳥栖市の日本語教育 ―教科「日本語」と地域創生―①鳥栖市の地域創生


①鳥栖市の地域創生

佐賀県鳥栖市は九州北部の交通の要所に位置する自治体である。鳥栖市ホームページ(市政情報)によれば、2019年8月末で人口は73,737人である。鳥栖市の地域創生については、成功例として昨年のブログで取り上げたが、以下に再度要約する。

鳥栖市の地域創生はその地の利を生かした徹底した産業立市によって行われた。

「“鳥栖発”創生総合戦略」[概略版](2015年8月)にある第一の基本目標は次の通りである。

鳥栖市における安定した雇用を創出する(雇用創出数を増やす、進出企業数を増やす)。

1954年の市制施行以来、鳥栖市は計画的に工業団地を造成し企業を誘致してきた。これまでに建設された工業団地は七つあり、誘致した企業は200に及ぶ。その大半は製造業および流通業であるが、近年は先端技術の企業も参入している。企業誘致の結果、多くの雇用が生まれ、鳥栖市は「人が集まるまち」となった。だがこれから家族を持つ若者がそこに定住できるためには居住環境の整備が不可欠である。そのため鳥栖市はまた育児環境、教育環境の充実を図った。さらにはまた若者に魅力ある街にするために、積極的に消費文化、娯楽文化、スポーツ文化の振興を図った。プロサッカー・チーム「サガン鳥栖」の創設はその象徴である。

さらにはまた鳥栖市は九州北部の大都市、福岡市の通勤圏内にあり、そのベッドタウンとして機能している。

こうした結果、人口減に悩む日本の地域で鳥栖市の人口は現在でも増え続けている。

鳥栖市の人口動態には同規模の他の都市には見られない特徴がある。その流動性、変化の大きさである。鳥栖市は転入者が多いと同時に転出者も多い。そのダイナミズムが開放的なコミュニティを作り出し、移住を容易にしているようである。

鳥栖市はこれからどうなるのか。人口は増え続けるのか。

二つの推定がある。日本創生会議(増田レポート)は、鳥栖市の人口増加は今後も継続し、2040年には77,944人に達すると推定している。一方、社人研の推測では、2035年の74,713人がピークで、その後は減少するという。

鳥栖市は、将来人口の予測に関しては非常に慎重である。無条件で人口増が続くとは思っていない。その大きな理由は、老齢人口比率が年々上昇し、社会全体の老齢化が進んでいることである。いかに対処すべきか、頭の痛い問題である。

現代研究会

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