2022年度後期現代研究会発表2 ビールの日本史
2022年度後期現代研究会発表2
ビールの日本史
2022年9月3日
桑原真弓
前期の発表ではビールの起源から現代までの発展を紹介した。では、日本にはどのように伝わり、広まり、根づいたのか。今回は日本におけるビールの歴史を見ていく。
江戸時代、オランダとの交流の中で一部の日本人がビールを初めて口にする。慣れない味であまり受けが良くなかったようであるが、外国人居留地で外国人が醸造するようになると、少しずつ日本人の間にも広まり始め、日本人もビール会社の経営をするようになる。
開国した日本は自国でビール醸造ができないようでは外国になめられるとばかりに、ビール事業に取り組み、民間企業も次々にビール会社を設立する。
ところが、日露戦争に備え初めてビールにかけられた高額の税金により、中小企業は廃業に追いやられる。
その後も日本各地でビール会社が誕生するが、昭和に入ると戦費調達のため、毎年酒税が増税され、価格も統制されるようになる。
第二次世界大戦中、食糧優先のため清酒は大幅に減産され、ビールは配給制となる。このことにより日本人の間にビールを飲むことが広まった。
さらに、高度経済成長期における電気冷蔵庫の普及により、ビールを家でも飲めるようになり、日本にしっかりビール文化が根づく。
平成に入り、規制緩和により地ビールが解禁されると、町おこしの一環として、各地でご当地ビールが誕生する。一時は下火になったものの、自分の手でこだわりのビールを作りたいという醸造家たちが登場し、クラフトビール・ブームが生まれ、今や大手ビール会社までもがクラフトビールを作るほどである。
バブル経済崩壊後は少しでも安く飲めるものをと、戦時中に代用ビールとして開発された発泡酒や第三のビールが人気となった。
しかし、新型コロナウイルスが流行り始めるとその傾向が変わってくる。飲食店に行くことを控えるようになり「宅飲み」が主流となったが、自宅ゆえの気安さから酒量が増えることが問題となり、よりいっそう健康志向が高まった。今では価格の安いものより、カロリーや糖質を減らした機能系ビールや微アルコールまたはノンアルコールビールの市場が拡大している。
若者の酒離れが顕著になってきた昨今、ビール業界はまた新たな苦境に立たされているが、福沢諭吉がその著書『西洋衣食住』で語っているようにビールは「胸膈を開く為に妙なり」つまり、心を開いてくれる作用があり、コミュニケーションを円滑にしてくれるのである。健康に気遣いつつ、その恩恵に与りたい。
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