2020年度後期発表6 1990年代以降の日本における宗教観

2020年度後期発表6

1990年代以降の日本における宗教観  杉平敦 

11月7日 (土)

6月の発表では、1990年代の日本を舞台として、我々が宗教をどのように受け止めたか、あるいは、どのように受け止め損なったかを考察した。その際、世間一般の反応と知識人の反応を分けて扱い、特に後者における議論の不備をいくつか指摘した。

 しかし、この発表には2つの問題点があった。まず、少なくとも3名の方々に、重大な誤解を招いてしまった。それも、発表の趣旨とは正反対の誤解が目立った。おそらく大半の方々には発表の意図が全く伝わっていなかったのではないか。続いて、吉本隆明と柄谷行人が同じ失敗を犯していることを単に指摘するだけで、現代日本の宗教意識をめぐる問題の根深さに全く届いていなかった。実際、吉本・柄谷の思想はかなり特殊なものであり、現代日本社会において主流となっている宗教観を代表するものでもなければ、それに対して影響を与えたり、逆にそこから影響を受けたりといった関係も見られない。そのようなものを分析したり批判したりしても、現代社会の何物をも見通すことはできまい。

 そこで今回の発表は、次の2つを軸に据える。(1)前回のスライド15枚のうち7枚をそのまま利用し、前回の誤解を解消しつつ、自分自身の問題意識、論点と主張を明確にする。(2)知識人らの学説や解釈よりはむしろ、世間一般での宗教に対する意識・受け止め方の方に焦点を絞り、現代日本の宗教をめぐる問題の深部に到達する。

 つまり、宗教を我々から見て「他者」「非日常」の位置に置いて「宗教は危ないのか」「宗教は怪しいのか」を問うのではなく、宗教を我々自身にとっての日常として捉えつつ、「宗教は危ない」「宗教は怪しい」という現代日本社会における主流の考え方・語り方に目を向ける、そうすることで何が見えてくるかを問うことになる。具体的な資料としては、アンケートや意識調査(回答だけでなく設問も)を予定している。

現代研究会

「文化と社会に関する様々なテーマ、諸問題を取り上げ、過去から未来への歴史的視野で考察し、議論を行う」ことがこの研究会の目的です。